貸金業法43条違反による不当利得に付する利息について--事務管理の追認
貸金業法43条違反による不当利得に付する利息について――事務管理の追認構成――
弁護士 岡本 哲
1 事務管理・準事務管理
2 貸金業法43条の適用なき場合の過払金への利息
3 準事務管理構成のメリット
1 事務管理・準事務管理
1-1 問題の所在
貸金業者に対する不当利得金返還請求は平成11年以降非常にふえているが、利息等はふされていないのが常である。これについてもうすこし利息をつけさせることはできないのだろうか。不法行為より多額のものの剥奪という制度としては事務管理の規定がある。
1-2 事務管理とは
他人の財産について勝手な処理をしても費用償還請求権が認められるなど、法的保護が与えられることがある。例えば、外国出張中の隣家の家の窓が暴風雨のために壊れたので、このさき雨が振り込まないように窓の修理をおこなってやる場合などである。これを事務管理という(民法697条以下)。事務管理の要件としては①他人の事務の管理を始めること、②他人のためにすること、③法律上の義務(権限がないこと)、④本人の意思及び利益に不適合でないこと、が通説的な要件とされる。
1-3 準事務管理とは
他人の事務を権限がないことを知りながら、自己の利益をはかるために管理することがある。特許権や著作権などの知的財産権の無断使用が代表例とされる。これらについて不法行為にもとづく損害賠償請求が成立しうる(民法709条以下)。
しかし、それでは「損害」しか填補されず、他人の特許や著作権を利用して巨利をあげた場合の利益を剥奪することはできない。
事務管理であれば、対価を全て引き渡さなければならないのに、同じ行為をしても違法な行為をしたほうが利得を保有できるというのは公平に欠けるから、利得剥奪のための制度をもうける必要がある、という問題意識のもとに提唱されたのが準事務管理理論である。
事務管理のふたつの要件をかいている(自分のためにやっている、本人の意思及び利益に不適合)から事務管理にはあたらない。しかし、準事務管理概念を認めたうえで、利益剥奪を認めようというわけである。
しかし、日本民法は事務管理を明示しながら、準事務管理を規定していない。また、知的財産権については無断使用の損害賠償請求権について侵害者が得た利益その他について損害と推定する規定をおこくことによって実質的に解決されている(特許法102条、著作権法114条等)。
学説としても我妻博士・松坂博士が反対にまわっているし、もう説をあたらめるか可能性もないから、となると、解釈論としては、準事務管理はとりにくいことになろう。
ところが、加藤雅信先生の平成14年発行の教科書「新民法体系Ⅴ 事務管理・不当利得・不法行為」有斐閣で突破口があった。「事務管理の追認」である。
ダットサンでもでてくるが、木村常信博士も唱えていたようである。木村博士は推理小説家山村美紗の父上である。
準事務管理は、事務管理のふたつの要件をみたしていないが、本人があとに追認した場合は本人の意思に合致したとして④は充足し、「他人のため」になされたわけでとはないが、本人がそれを許容しているのだからそれでいい、ともいえる。あるいは事務管理の要件事実から②をはぶく手もあるかもしれない。
2 貸金業法43条の適用なき場合の過支金への利息
ところで、貸金業者が消費者から利息制限法超過の利息をとりつづけていて、しかも貸金業法43条の要件をみたさない場合は、不当利得として返還債務をおう。この場合商事利息だとしても年間6パーセントの遅延損害金が生じるにすぎない。通常の民事の利息だとすると年間5パーセントである。貸金業者は利息制限法の制限利息(元本が100万円以上であれば年15パーセント、100万円未満20万円以上であれば年18パーセント、20万円未満であれば年20パーセント)を超える金額で運用して利益をえているののに十分その利益を剥奪しえないのである。
そこで、準事務管理あるいは事務管理の追認によって運用利益も剥奪できる、とするわけである。
大審院大正7年12月19日判決は、「共有者のひとり甲が他の共有者乙の同意を得ることなく、自己の持分を他に売却する行為は、不法行為を組成するが、他の共有者が後日その売買行為を承認したときは、事務管理の法則により、乙は民法第701条、第646条の規定にもとづき甲が乙の持分を売却して受け取った代金の引渡を請求することができるとする。
また、民法701条645条を根拠に相手方に報告を求めることも可能になる。
3 事務管理・準事務管理構成のメリット
貸金業者から消費者に対する過剰支払分返還金について年6分以上の割合による利息を認めた判例は寡聞にして筆者は知らない。事務管理・準事務管理構成自体ほとんど主張されていないからであろう。
手続法的にみた場合の事務管理・準事務管理構成主張のメリットとしては、大判大正7年12月19日の解釈から導かれるものであるから、最高裁レベルの判例違反ということを申し立てることができ、318条1項の上告受理申立の理由となるので、必ず最高裁判所の判断をあおぎうる可能性がでてくる。
また、実体法的にも民法701条645条を根拠に相手方に報告を求めることができる。
なお、時効開始は追認時ということになろうが、これでは実質的に時効にかからないことになりかねないので、取引終了時点が基準か、終了後、法律家に相談して過剰支払いの存在を知った時、ということになろうか。
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