おまとめローンの問題性と登記に関与した司法書士の責任
弁護士 岡本 哲
1 おまとめローンの貸金業者の問題性
おまとめローンとは、最近週刊誌とかで東京スター銀行が広告しているものとか、アイフルとかCFJがおこなっているもので、複数の債務をかかえている多重債務者の債務を一本化する形態の消費者金融取引をさしている。。債務者にしてみれば、債権者の数が減少するというメリットがある。まとめるほうにしてみれば消費者ローンとしては多額の貸し付けが一度に行うことができ、回収ができるのであればおいしい取引である。
問題があるのは、一本化の際に、多重債務のほとんどが利息制限法違反の金利をとっていて、弁護士・司法書士等が関与して貸金業者と交渉すればかなり減額されるにもかかわらず、このような清算をせずに、貸金業者請求金額そのままの金額をもとに融資をまとめる実務が横行していることにある。おまとめローンを行う側としてみれば融資額が大きければ大きいほど(回収できれば)利益が大きいわけで、なにも自分の利益に反することを債務者に教えてやる必要はない、ということになる。
しかし、それでいいのであろうか。相手の法的無知に乗じて利益をおさめること自体商人道に反するのではないだろうか。
契約自由は情報が契約者に完全に平等にいきわたっていることが前提となっている。消費者契約においては、消費者側が業者側と比較して圧倒的に知識が不足し不利なことからさまざまな消費者保護規定をおいている。
貸金業においても消費者が対象となる場合ばかりではないが、さまざまな消費者保護がなされている。
過剰支払利息の返還をするためには債務者と貸金業者の過去の取引履歴がわかることが重要である。ところが、多重債務に陥るような債務者の場合、このような記録を保持していることはすくなく捨てたり亡くしたりで散逸してしまっていることがおおい。そのため、業者側に保管しているデータを開示しろと、迫ることになる。簡単な手間であるが、業者側にしてみれば、損をすることが目にみえているのであるから、(ただし、必ず裁判でまけるとなれば年率5~6パーセントの銀行金利より高い利息がつくので別の論理もなりたつ)開示をしぶるのが通常であった。しかし、平成17年の最高裁判決で業者の開示義務を認め、平成17年10月に貸金業ガイドラインが改正され、不開示業者は営業停止等行政処分の対象となることになった。
となると、少なくとも平成17年10月以降のおまとめローンに関しては、債務整理としての債務一本化をすすめている以上、それについて消費者が誤っている場合は正す義務が信義則上生じると考えて、多重債務のすべてについて業者に開示させたうえ、過剰支払の金利清算した総額以上の融資をしてはならない、とすべきであろう。
これに違反した場合の効果であるが、消費貸借契約の無効をきたし、過剰融資部分については不法原因給付となるということでいいのではないだろうか。
また、慰謝料請求等の不法行為責任も生じさせていいように思われる。慰謝料は制裁的損害賠償の機能も営んでいるからである。
森泉章編「新・貸金業規制法[第二版]」勁草書房・平成18年475頁以下では、銀行のおこなうおまとめローンについて「借換えを推奨するに際しては、法律家による債務整理手続を取ることも合わせて勧めるべきであろう」としている。
2 おまとめローンの抵当権設定登記に関与した司法書士の責任
設例1として以下の例を考えてみる。
平成17年10月に相談を受けた弁護士甲が債務者乙に多重債務の整理を依頼され、貸金業者丁に債務を一本化し、乙の母丙所有の土地建物に抵当権を設定して借入をおこなった。登記業務も弁護士甲がおこなった。金利は利息制限法をこえる金利であり、案の定、乙は支払うことはできず、また丙も支払うことはできず、強制競売により、丙は家を失ったうえ、乙丙は破産した。
一本化の際に利息制限法でひきなおした場合、そもそもこのような借入の必要はないことが判明した。
乙丙は甲にいかなる責任を問うことができるのか。
甲は弁護士としてやるべき専門家責任をまったく果たしていないなとして、利息制限法で引きおなした場合と現在の債務の差額及び相当額の慰謝料を支払うべきであると思われる。
(実際は報酬がどこからでているとか,依頼の趣旨がどうなのか細かい争いがでてくることは予想される)。
設例2として以下の例を考えてみる。おまとめローンに司法書士が関与する典型例のひとつであろう。
貸金業者や銀行丁からいつも依頼を受けている司法書士甲は、乙を主たる債務者、丙を物上保証人とする抵当権設定登記を丁から丙の権利証と実印を預かったうえで抵当権設定登記を依頼され、丙及び丁の代理人とてして抵当権設定登記をおこなった。丙とは全く接触しなかった。
設例2-1 司法書士甲はおまとめローンの問題性について全く意識しておらずおまとめローンとも知らなかった。
設例2-2 司法書士甲はおまとめローンと意識してはいたが、問題意識はなかった。
設例2-3 司法書士甲はおまとめローンの問題性を意識し、本件もおまとめローンとして知っていたが、乙丙にとくに説明も登記をすすめた。
設例2-3については信義則上問題がある行為がおこなわれていることを知っていながらこれを放置するわけであり、しかも代理権限があるわけであるから、責任をとわれてしかるべきであろう。悪意であるから過失相殺もほとんど行われなくていいように思われる。
設例2-2は違法性の意識をかいた場合であるが、この場合は故意ではないので2-3のようにはいかない。問題性がはっきりしている場合は過失責任がとえるが過失相殺はありうる、ということになろう。
設例2-3の状態にするため、一度でもおまとめローン登記をおこなった司法書士には弁護団等が警告文を内容証明でおくりつけることを計画中である。
警告に反しておこなったのであるから、故意あるいは警告をよまなかったことについて故意に準じた重い過失ありということができよう。
2-1に責任をとうことができるかは、弁護士業務の本質・司法書士業務の本質ともかかわる重い問題であり、いずれ詳しく考察してみたい。
(登記業務オンリーである司法書士の場合、保護義務が発生しないのではないか、ということがあるが、それはいかにもいきすぎであろう。家を不法にとられることを専門家がみのがしていいというのが現在の日本で受け入れられるとは思われない)
まずは議論のたたき台とされたい。
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