破産法の法律相談 新・青林法律相談[20] -3-
2007年10月25日発行
編集者:木内道祥/小松陽一郎
発行者:逸見慎一
発行所:株式会社 青林書院
ISBN 978-4-417-01438-6 C3332
目 次
[巻末付録 新・司法試験倒産法 ―――問題と解説]
平成18年度倒産法
第1問………[野村 剛司]
甲建物を所有するA社から同建物を賃借しているBが、次のような事情の説明及び質問をしてきたとする。
Bの説明の中の事実関係はすべて証拠によって説明できるものと仮定して、Bの1から4までの質問にどの
ように回答すべきか検討しなさい。
なお、回答に際しては、仮にA社について破産手続が開始された場合、A社にはある程度の財産があるこ
とから異時廃止になる見込みはなく、破産手続は7,8か月くらいで最後配当を経て終結するであろうこと
を前提としなさい。
【Bによる事情の説明】
私は、甲建物の2階全部を所有者であるA社から賃借していて、現在事務所として使っています。賃貸借
期間は3年、賃料は毎月50万円で、敷金として300万円(賃料6か月分)を差し入れています。
賃貸借の開始からもうすぐ2年8か月経過しますが、A社の債権者からの申立てに基づいて、間もなくA社
について破産手続開始の決定がされるようです。約定期間の満了まであと約4か月ありますが、その残り4か
月間は、私はまだ甲建物で仕事を続ける必要があります。ただ、賃料がほぼ同額でもう少し広い賃貸物件が見
つかったので、約定期間が満了したら賃貸借契約は更新せずに、別の建物に事務所を移すつもりでいます。
私は、今まで賃料の支払を怠ったことはなく、A社が破産したとしても、A社の社長のCには昔から世話に
なっていることから、取りあえず残り4か月分も約定どおりに支払うつもりでいます。なお、敷金については、
今後万一賃料の不払等があれば格別、そうでなければ控除の対象となる損害金等は現時点ではない旨をCに確
認済みです。
【Bの質問】
1.A社の破産管財人がA社の破産を理由として私に甲建物からの即時の退去を求めることはできますか。
2.A社の破産手続開始の決定後も私が賃料を支払い続けることを前提にして、後で敷金相当額を幾らかでも
回収する方法はないのでしょうか。
3.A社の破産手続において敷金返還請求権を行使しなければならないとして、その行使はどのようにすれば
よいでしょうか。また、どのように支払を受けることができるのでしょうか。
4.Cによると、A社は再生手続開始の申立てをすることを検討中であるとのことです。仮にA社について再生
手続が開始されても、私は賃料を支払い続けるつもりですが、この場合、敷金返還請求権をどのように行使
することができるでしょうか。
第2問………[井口 喜久治]
次に掲げる事例について、以下の設問に答えなさい。
【事 例】
A社は、建設工事を業とする株式会社であったが、折からの不況で、資金繰りが悪化していた。そこで、B
信用金庫から1000万円の借入れをしようとしたところ、B信用金庫からは、A社の代表者であるCと、さ
らにもう1人十分な資力を有している者の計2名の連帯保証と不動産担保とがない限り、融資はできないと言
われた。A社はいわゆる同族会社であり、その株式の70%はCが保有しており、代表者であるCのほか、親
族である2名の取締役がいるが、業務はCが全面的に執り行っており、他の取締役には十分な資力がなかった。
そこで、Cは、高校時代からの友人であり、以前若干の資金援助をしたこともあるDに「絶対に迷惑をかける
ことはないから。」と懇願し、連帯保証人になるとともに、Dの所有する山林を担保に提供することに同意し
てもらった。その結果、平成17年10月20日、B信用金庫は、C及びDを連帯保証人とし、D所有の山林
に抵当権の設定を受けて、A社に対し1000万円を貸し付けた。なお、C及びDは、連帯保証や物上保証を
するに際して保証料を受領していない。
しかし、その後、A社の主要な受注先である大手建設株式会社が同年11月15日、突然再生更正手続開始
の申立てをし、従来の下請関係を抜本的に見直す措置がとられたため、A社の売上高は大幅に減少した。その
結果、平成18年2月24日、A社は、ついに振り出した約束手形を決済できず、当該手形が不渡りになって
しまった。
そして、3月3日、A社は、破産手続開始の申立てをし、同月10日、開始決定がされた。また、A社の代
表者であるCも、多額の連帯保証債務を弁済できない状態になり、3月3日、自ら破産手続開始の申立てをし、
同月10日、開始決定がされた。Dは、このような状況の推移に驚いていたが、4月初めになって、B信用金
庫の担当者から連帯保証債務の即時の履行を強く請求された。ところが、D自身、自己の経営しているコンビ
ニエンス・ストアについて、近くに24時間営業のスーパーマーケットが出店したことなどから急激にその売
上げが落ち込んでいたところで、そこにこのような連帯保証債務の履行の請求がされれば事業の継続は困難に
なると判断して、4月14日、再生手続開始の申立てをし、同月28日、開始決定がされた。
B信用金庫は、A社の破産手続において1000万円の貸付債権について届出をし、Cの破産手続において
1000万円の連帯保証債務に係る債権について届出をするとともに、D所有の山林に対する抵当権を近く実
行する旨をDに通知した。ところが、Cの破産手続における債権調査では、Cの破産管財人Eは、上記連帯保
証契約を否認する旨を主張して、B信用金庫の破産債権を認めない旨の認否をしたので、B信用金庫は破産債
権査定申立てをした。また、B信用金庫がD所有の山林に対する抵当権を実行しようとしているので、Dの再
生手続の監督委員Fは、否認権を行使する権限の付与を受け、上記抵当権設定契約を否認する旨を主張して、
抵当権不存在確認の訴えを提起した。
[設 問]
1.あなたがFであるとして、B信用金庫に対する抵当権不存在確認訴訟において、否認権の行使を基礎づける
ため、どのような主張をすることが考えられるか。想定されるB信用金庫からの反論も指摘しながら論じな
さい。
2.あなたがB信用金庫の代理人であるとして、Cの破産手続における破産債権査定の手続において、Eの否認
権の主張に反論するため、どのような主張をすることが考えられるか。CがA社の代表者であるという点を
考慮に入れて、想定されるEからの反論も指摘しながら論じなさい。
平成19年度倒産法
第1問………[井口 喜久治]
次の事例について、以下の設問に答えなさい。
【事 例】
A株式会社は、かねてから代表取締役Bの親友であるCの経営するD社に無担保で貸付けをしていたところ、
この貸付金の回収が不能になったことから、経営状況が著しく悪化した。いち早くA社が支払不能の状況にあ
ると判断した同社の取引債権者であるE社は、平成19年3月2日、裁判所に対し、A社についての破産手続
開始の申立てをし、同月23日、破産手続開始の決定がされ、破産管財人Xが選任された。破産管財人Xは、
調査の結果、Bに資産があることが判明したので、A社がD社に対して有する債権のうち回収不能になった
3000万円について、Bについて、Bに対して役員としての損害賠償責任を追及したいと考えている。
他方、E社は、A社に対して500万円の債権を有していたので、A社に対する破産手続において破産債権
の届出をしたが、Bの妻であるFは、平成18年10月に当該債権につきE社との間で連帯保証契約を締結し
ていたことから、E社からの求めに応じ、同社が破産債権の届出をした後、当該連帯保証債務の全額につき弁
済した。
[設 問]
以下の小問1から3までについては、それぞれ独立したものとして解答しなさい。
1.(1)破産管財人XによるBの責任追及のための手続について説明しなさい。
(2)破産手続開始前から、D社への無担保の貸付けを理由として、A社の株主GからBに対し、回収不能分
である3000万円について、適法に株主代表訴訟(会社法第847条第3項)が提起されていた場合
には、破産管財人Xは、Bの責任追及のためにどのように対応すべきか。(1)で説明した手続との関
係にも留意しながら解答しなさい。
2.Bは、A社に対し平成17年に2000万円貸し付けたとして、A社に対する破産手続において当該貸付金に
ついて破産債権の届出をしたが、取引債権者の多くは、A社の破綻の原因を作ったBが他の破産債権者と同様
の配当を受けることに不満を持っている。他方で、Bは以前から資産をはるかに上回る多額の債務を負ってお
り、近々自己破産の申立てをすると噂されている状況にある。破産管財人Xとしては、Bが届け出た破産債権
について、どのように対応することが考えられるか。
3.Fは、破産手続開始の直前まで、A社所有名義の建物につき、A社との間で賃貸借契約を結んで居住していたが、
賃料債権については合計600万円が未払状態になっていた。Fは、E社に対する連帯保証債務についての弁済
に係る以下の(1)(2)の債権を自働債権、上記賃料債権に係る債権を受働債権として、相殺しようとしてい
る。(1)(2)のそれぞれの場合について相殺は認められるか。
(1)弁済による代位によって取得した原債権
(2)求償権
第2問………[井口 喜久治]
次の事例について、以下の設問に答えなさい。
【事 例】
Aは、宅地建物取引主任者の登録を経た上、宅地建物取引業の免許を受けて自ら不動産仲介業を営んでいたが、
平成10年に購入したマンションの住宅ローンの返済のためや、平成15年のころから始めた株取引及び商品先
物取引により生じた2000万円余りの損失の処理のために、いわゆる消費者金融業者からも借入れを繰り返す
ようになった。その結果、平成19年1月当時、Aの負債は、住宅ローンの残債務1600万円のほか、損失処
理のための借入債務も、知人及び消費者金融業者からの借入れを主なものとして合計1500万円に達していた。
他方、その当時のAのめぼしい財産としては、住宅ローンを被担保債権とする抵当権が設定されている時価15
00万円のマンション、平成18年5月にBに絵画を時価相当額である50万円で売却したことにより生じた売
買代金債権及び時価40万円の中古自動車があるだけであった。その上、収入が安定せず、その額もかろうじて
生活費を賄える程度に減少していたので、Aは、弁済期にある債務を継続的に支払えない状況に陥った。そこで、
Aは、平成19年1月下旬、債務の整理について、自治体が主催する法律相談を受けたこともあったが、その時
は、破産手続を選択する決断ができなかった。
Aは、その後も負債の返済に窮していたため、平成19年2月初旬、消費者金融業者に借入れを申し込む際、
申込書の「他の業者からの借入額」を記載する欄に、正直に記載すると借入れを断られるとの思いから100万
円と記載した。Aは、応対した従業員から「本当にこれ以上の負債はないのですか。」と尋ねられたものの、
「他にはありません。」と答え、50万円を借りたが、この借入れについてはわずかな返済しかできなかった。
また、Aは、借入れ先を探している際、クレジットカードを利用して家電量販店でパソコンを購入し、それを
送ってくれれば購入価格の半額程度で買い取るとの情報をある業者から得た。藁にもすがる思いであったAは、
平成19年3月上旬、クレジットカードを利用して家電量販店において60万円でパソコンを3台購入し、直ち
にその業者に送って30万円を得た。しかし、その金員は他の返済に費消され、クレジットカード会社へはほと
んど弁済することができなかった。
平成19年3月下旬、返済の督促に耐えきれなくなったAは、弁護士Cに相談の上、同年4月6日、破産手続
開始及び免責許可の各申し立てをし、同月11日、破産手続が開始され、裁判所により破産管財人Dが選任された。
[設 問]
1.Aは、自治体が主催した法律相談を受けた際、担当弁護士が説明してくれた小規模個人再生手続にも関心を
持ったが、「不動産仲介業の収入が減って生活費を賄うのがやっとの状態だから、小規模個人再生手続を利
用することは難しいと思う。」との説明を受けた。
破産手続との比較において小規模個人再生手続の利点を指摘するとともに、担当弁護士が「小規模個人再
生手続を利用することは難しい。」と判断した理由を簡潔に説明しなさい。
2.Bから次のような相談を受けた弁護士Eは、Bに対して、どのように答えるのが適切か検討しなさい。
【Bの相談】
私は、平成18年5月にAから絵画1点を代金50万円で購入し、その引渡しを受けましたが、贋作でないか
との疑いもあって代金を支払っていませんでした。その後、平成19年4月下旬に至り、本物であることが判明
したので、Aに対し、50万円を支払いました。ところが、同年5月中旬になって、Aの破産管財人と称するD
から、50万円をDに支払うように求められました。
私は、Dの求めに応じなければならないのでしょうか。
3.破産手続開始の申立てを受任した弁護士Cは、Aから次の質問を受けた。どのように答えるのが適切か検討
しなさい。
【Aの質問】
私は、破産手続が開始された後は、業者から委託を受けて化粧品や健康食品の訪問販売の仕事に従事して生計を
立てようと考えています。仕事をするためには自動車があった方が便利ですし、公共交通機関が乏しい地方である
ことから、高齢の母の通院の介助や日用品の買物といった日常生活の場面でも自動車が不可欠です。そこで、中古
自動車を保有し続けることができるのであればありがたいのですが、それは可能でしょうか。
4.Aの免許許可の申立てについて裁判所が判断する際に検討すべき事項を指摘して説明しなさい。
ただし、設問2及び3に現れた事実は考慮しないものとする。
[巻末資料 参考書式/破産法改正条文一覧]
申立準備関係書式[No.1~3]
参考書式1 受任通知書(1)
参考書式2 受任通知書(2) ―――履歴開示請求を含む
参考書式3 債権調査票
同時廃止申立関係書式[No.4~16]
参考書式4 破産同時廃止申立て書式 Ver.2.0目録
参考書式5 破産申立書(同時廃止用)
参考書式6 標準資料一覧表
参考書式7 標準資料一覧表について
参考書式8 債権者一覧表
参考書式9 債権者一覧表について(公訴公課用)
参考書式10 債権調査票
参考書式11 債権調査に関する上申書
参考書式12 財産目録
参考書式13 報告書
参考書式14 家計収支表
参考書式15 事業に関する報告書
参考書式16 破産同時廃止申立てチェックリスト
法人申立関係書式[No.17~55]
参考書式17 法人用破産申立書について <一部抜粋>
参考書式18 破産申立書(法人用)(1)
参考書式19 破産申立書(法人用)(2) ―――簡略版
参考書式20 報告書(法人用)
参考書式21 添付目録(法人用)
参考書式22 資産及び負債一覧表(法人用)(1)
参考書式23 資産及び負債一覧表(法人用)(2)
参考書式24 債権者一覧表
参考書式25 借入金一覧表
参考書式26 手形・小切手債権一覧表
参考書式27 買掛金一覧表
参考書式28 リース債権一覧表
参考書式29 労働債権一覧表(1)
参考書式30 労働債権一覧表(2) ―――簡略版
参考書式31 その他の債権者一覧表
参考書式32 滞納公租課一覧表(1)
参考書式33 滞納公租課一覧表(2) ―――簡略版
参考書式34 被課税公租公課チェク表
参考書式35 財産目録(総括表・法人用)
参考書式36 預貯金目録
参考書式37 受取手形・小切手目録
参考書式38 売掛金目録
参考書式39 在庫商品目録
参考書式40 貸付金目録
参考書式41 不動産目録
参考書式42 機械・工具類目録
参考書式43 什器備品目録
参考書式44 自動車目録
参考書式45 電話加入権目録
参考書式46 有価証券目録
参考書式47 賃借保証金・敷金目録
参考書式48 保険目録
参考書式49 その他の財産目録
参考書式50 最終の決算書に記載されており、かつ申立書の財産目録に記載のない財産の処分状況一覧表
参考書式51 リース物件等一覧表
参考書式52 係属中の訴訟等一覧表
参考書式53 倒産直前の処分行為等一覧表
参考書式54 疎明資料目録(法人用)
参考書式55 管財人引継資料一覧表(法人用)
自然管財事件申立関係書式[No.~]
参考書式56 自然人用破産申立書について <一部抜粋>
参考書式57 破産申立書(自然人・管財事件用)(1)
参考書式58 破産申立書(自然人・管財事件用)(2) ―――簡略版
参考書式59 管財補充報告書
参考書式60 報告書
参考書式61 家計収支表
参考書式62 添付目録(自然人用)
参考書式63 資産及び負債一覧表(自然人用)(1)
参考書式64 資産及び負債一覧表(自然人用)(2) ―――簡略版
参考書式65 債権者一覧表
参考書式66 借入金一覧表
参考書式67 手形・小切手債権一覧表
参考書式68 買掛金一覧表
参考書式69 リース債権一覧表
参考書式70 労働債権一覧表(1)
参考書式71 労働債権一覧表(2) ―――簡略版
参考書式72 その他の債権者一覧表
参考書式73 滞納公租公課一覧表(1)
参考書式74 滞納公租公課一覧表(2) ―――簡略版
参考書式75 被課税公租公課チェック表
参考書式76 財産目録(総括表・自然人用) <一部抜粋>
参考書式77 預貯金・積立金目録 <一部抜粋>
参考書式78 保険目録 <一部抜粋>
参考書式79 自動車目録 <一部抜粋>
参考書式80 賃借保証金・敷金目録 <一部抜粋>
参考書式81 電話加入権目録 <一部抜粋>
参考書式82 退職金目録 <一部抜粋>
参考書式83 その他の財産目録
参考書式84 リース物件等一覧表
参考書式85 係属中の訴訟等一覧表
参考書式86 申立直前の処分行為等一覧表
参考書式87 疎明資料目録(自然人用)
参考書式88 管財人引継資料一覧表(自然人用)
参考書式89 自由財産拡張申立書
関係書式[No.90~91]
参考書式90 上申書(免責観察型用)
参考書式91 管財事件の手続費用について
関係書式[No.92~94]
参考書式92 自由財産拡張にかかる自働車受領書
参考書式93 担保権消滅許可申立書
参考書式94 否認の請求申立書
関係書式[No.95~102]
参考書式95 破産債権届出書(従業員以外の方用)
参考書式96 労働債権等届出書(従業員の方専用)
参考書式97 破産債権者表(配当一体型)
参考書式98 異議通知書(一般)
参考書式99 異議撤回書(一般)
参考書式100 破産債権取下書
参考書式101 破産債権名義変更届出書
参考書式102 破産債権査定申立書
破産法改正条文一覧(平成19年8月現在未施行分)
事項索引