判例タイムズ1253
2008年1月1日発行
第59巻 第1号 通巻1253号
発行人:浦野哲哉
編集人:遠藤智良
発行所:株式会社 判例タイムズ社
雑 誌:27501-1/1
ISSN:0438-5896
【記事紹介】
■座談会〔訴訟理論研究会〕
伊藤民事手続法学と判例・実務/伊藤 眞・松下淳一・山本和彦・垣内秀介・加藤新太郎
■労働審判制度の1年半 ―――その評価と他の「民事紛争解決制度」に及ぼす影響
労働審判制度の1年半 ―――構想時の基本的論点に照らして/菅野和夫
労働審判制度にみる「民事紛争解決制度」の将来/定塚 誠
■大阪民事実務研究
労働基準法41条2号の管理監督者の範囲について/細川二朗
■関西家事事件研究会報告[27]
成年後見制度の活用に向けて/孕石孟則
◆私人の名誉は公人の名誉より軽いか(4)
名誉・プライバシー侵害訴訟再考の視点/京野哲也
[判例紹介]
【速 報】
[商 法]
[1]楽天対TBS会計帳簿等内覧等請求事件
会社法433条2項3号所定の「請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業」の
意義について判示した事例
(東京地裁 平19.9.20判決)
[2]日本精密新株発行差止仮処分事件
新株発行が著しく不公正な方法によるものであるとして,その発行の差止めを求める仮処分の申立てが
認容された事例
(さいたま地裁 平19.6.22決定)
【最高裁判例】
[民 法]
[1]信用保証協会を債権者とし被担保債権の範囲を保証委託取引により生ずる債権として設定された
根抵当権の被担保債権に、信用保証協会の根抵当債務者に対する保証債権は含まれるか
(最高裁第一小法廷 平19.7.5判決)
[刑事訴訟法]
[2]1 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義
2 有罪認定に必要とされる立証の程度としての「合理的な疑いを差し挟む余地がない」の意義は,
直接証拠によって事実認定をすべき場合と情況証拠によって事実認定をすべき場合とで異なるか
(最高裁第一小法廷 平19.10.16決定)
【行政裁判例】
[行政法一般]
[1]1 処分期間経過後の処分の取消しを求める訴えの利益が肯定された事例
2 行政手続法12条の処分基準が公にされている場合の理由提示の程度として,処分基準の提示まで
必要とした事例
(大阪地裁 平19.2.13判決)
[行政争訟法]
[2]都市計画法81条1項に基づく違反是正命令の発令を求めた非申請型義務付け訴訟が,「一定の処分が
されないことにより重大な損害を生ずるおそれ」が認められないとして却下された事例
(大阪地裁 平19.2.15判決)
[国家補償法]
[3]1 町(その後市となる)発注の公共工事の入札において,特定の業者を入札業者の指名からはずした
町長の行為に裁量権の逸脱,濫用の違法があるとして,業者からの請求を棄却した一審判決が取り
消され,損害賠償の請求の一部が認容された事例
2 町発注の公共工事の入札において指名業者からはずされたことによる当該業者の損害額の算定
(福岡高裁 平18.7.14判決)
[地方自治法]
[4]1 公金の支出が給与条例主義に反して違法であることによって生ずる損害賠償請求権又は不当利得
返還請求権の不行使をもって怠る事実とする住民監査請求が,いわゆる不真正怠る事実として,
監査請求期間の制限(地方自治法242条2項本文)に服するとされた事例
2 住民監査請求は,監査を求める当該行為又は怠る事実を他から区別できる程度まで特定できれば,
その具体的な行為者等が判明していなくとも,監査請求をすることができるから,その時点から
相当な期間内に監査請求をした場合に限って,監査請求期間経過について正当理由(地方自治法
242条2項ただし書)があるとされた事例
3 公金の支出から1年以上が経過し,かつ,当該公金の支出が全国紙で報道されてから約3か月が
経過した後にされた住民監査請求が,監査請求期間の経過につき正当な理由(地方自治法242
条2項ただし書)がないとされた事例
4 訴えの変更により追加された訴え(住民訴訟)が,当初の訴え提起の時に提起されたものと同視し,
提訴期間(地方自治法242条の2第2項2号)の遵守に欠けるところがないと解すべき特段の事
情がないため,不適法であるとされた事例
(大阪地裁 平19.7.12判決)
[5]昆虫の森負担区分事件
村が県に対してした施設用地取得費の寄附が地方財政法28条の2に違反しないとされた事例
(東京高裁 平17.2.9判決)
【労働裁判例】
[個別的労働関係]
[1]劇場施設を管理運営する財団法人との間で期間を1年とする出演基本契約を締結・更新していたオペラ
歌手が労働者に当たらないとされた事例
(東京高裁 平19.5.16判決)
【民・商事裁判例】
[民 法]
[1]1 土地の売買代金債権が差し押さえられた場合において,第三債務者(買主)が差押え前に債務者
(売主)に対して売買の目的土地に付着した仮差押登記の抹消登記請求権を有しており,上記差
押え後にこの抹消登記請求権が転化した損害賠償請求権を取得したとしても,同土地に仮差押登
記が経由されたのは,上記差押え後であり,差押え当時には,第三債務者は債務者に対して本件
土地の完全な所有権の取得・行使を妨げる負担についての抽象的な抹消登記請求権を有していた
にすぎない場合は,第三債務者は,上記損害賠償債権と上記代金債権の相殺をもって差押債権者
に対抗することはできない
2 土地の売買契約において,売主は引渡期限までに同土地に質権等が設定されているときはこれを
消滅させてその登記を抹消させる,買主は同土地の引渡しを受けて所有権移転登記を経由したと
きは残代金を支払う旨の約定がある場合でも,その代金債権は,売主が上記義務を完全に履行し
た場合に請求し得べき条件付き債権ということはできず,第三債務者たる買主が土地の引渡し及
び所有権移転登記を受けているときは,第三債務者は,売主の上記義務の不履行を理由に差押債
権者に対して代金の支払を拒むことはできない
(名古屋高裁金沢支部 平19.7.4判決)
[2]心房中隔欠損症等の手術に携わった人工心肺医が患者が死亡したことについて業務上過失致死罪で逮捕
されたことを報道するテレビ番組が医師の肖像権を侵害せず,報道内容が真実であると信じたことに相
当の理由があったとされた事例
(東京高裁 平19.8.22判決)
[3]マラリアの危険性を告知する義務及びツアー後の注意喚起義務を怠ったとして,旅行会社に対してツアー
参加者の遺族らが求めた損害賠償請求が棄却された事例
(東京地裁 平18.11.29判決)
[4]1 周辺住民らによる人格権に基づく管理型最終処分場の建設差止請求について,受忍限度を超える
健康被害の発生の蓋然性が認められるとして請求を認容した事例
2 周辺住民らの実力行使により,上記処分場の建設工事を妨害されたとして,上記処分場の設置会社が
上記住民らに対して行った共同不法行為に基づく損害賠償請求について,上記住民らの行為は,社会
通念上,違法とまではいえないとして請求を棄却した事例
(鹿児島地裁 平18.2.3判決)
[5]黄斑部網膜上膜形成症に対する黄斑上膜手術等の後に患者の視力が低下したことにつき,担当医師の
術中の過失に基づくものと認めた上,患者の社会的地位を考慮して術後の治療の際の個室費用を損害
と認め,鍼灸治療等のための費用も2年間の限度で損害と認めたものの,術後の収入の低下がないと
して逸失利益の算定を大幅に減額した事例
(東京地裁 平18.7.28判決)
[6]別居9年以上(同居約14年)の夫婦間の長男は,四肢麻痺の重い障害を有するため,日常生活全般に
わたり介護を必要とする状況にあり,成人に達していても未成熟の子とみるべく,その子の世話をする
相手方配偶者は,その年齢(54歳)からしても就業して収入を得ることが困難な状態にあり,また,
住居明け渡しの問題もあり,離婚により直ちに経済的困窮に陥ることが十分予想されるとして,離婚請
求が棄却された事例
(東京高裁 平19.2.27判決)
[知的財産]
[7]1 特許法104条の3第1項の「当該特許が無効審判により無効とされるべきもの」の解釈について,
特許について訂正審判請求あるいは訂正請求がなされている場合には,将来その訂正が認められ,
訂正の効力が確定したときにおいても当該特許が無効審判により無効とされるべきものと認められ
るかどうかにより判断すべきであると判示し,1訂正請求が訂正要件を満たすか,1当該訂正によ
り無効理由が解消されるか,2被告製品は訂正後の請求項の技術的範囲に属するかについて検討し,
いずれも肯定されることを理由に特許法104条の3第1項の抗弁の主張を否定した事例
2 特許法101条1号の「生産」は日本国内における生産を意味するものであると判示して未完成品を
海外に輸出して海外で完成品を組み立てる場合の,国内における未完成品の製造及びその輸出行為に
ついて間接侵害が成立しないとした事例
(東京地裁 平19.2.27判決)
[8]人形作品の写真集の制作・出版に関して出版社から金銭を受け取った者に対する人形作品の制作者による
不法行為に基づく損害賠償請求が認められなかった事例
(知財高裁 平19.7.25判決)
[倒産処理法]
[9]破産財団から放棄された不動産に係る別除権放棄の意思表示を破産会社の破産手続開始当時の取締役
(旧取締役)に対してした場合に当該意思表示を有効と認め得る特段の事情がないとされた事例
(名古屋高裁 平16.11.30決定)
【刑事裁判例】
[刑 法]
[1]1 死体なき強盗殺人事件等について,間接事実の積み重ねにより有罪とされた事例
2 預金の引き出しのためキャッシュカードを現金自動支払機に挿入し残高を照会した段階で窃盗に
対する実行の着手を認め,暗証番号不一致により照会も預金引出行為もできなかった事例につい
て窃盗未遂罪を認めた事例
3 被告人が犯人であるかどうかを判断するために,被告人の姿を公道等でビデオ撮影したその映像
証拠が違法収集証拠でなく証拠能力があると判断された事例
(京都地裁 平18.5.12判決)
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